韓国語を活かせる仕事を探すとき、求人サイトを開いても「どんな職種があって、どのくらいの語学力が要るのか」が見えにくい。募集要項の言葉づかいもばらばらで、比べようがない。
そこで、HangulJobsに掲載中の韓国語人材向け求人5,691件を全件集計した。職種、勤務地、求められる語学レベル、勤務形態まで、実際に開いている求人だけを数えた数字だ。
先に結論を言うと、日本は韓国語求人の世界で二番目に大きい市場であり、語学力の面では最も入りやすい主要市場だった。求人1,744件のうち386件が中級レベルで応募できる。これは中級で応募できる全求人894件の43パーセントにあたる。
日本の韓国語求人は1,744件、世界で二番目に多い
まず市場の大きさを国別に見る。
| 国 | 求人数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 中国 | 1,831件 | 32.2% |
| 日本 | 1,744件 | 30.6% |
| ベトナム | 1,002件 | 17.6% |
| インドネシア | 547件 | 9.6% |
| 韓国 | 163件 | 2.9% |
| ロシア | 157件 | 2.8% |
| その他 | 247件 | 4.3% |
中国と日本でほぼ三分の二を占める。日本国内で韓国語を使う仕事を探す場合、選択肢の数そのものは十分にあると言っていい。
ただし数だけを見ても意味がない。問題はその1,744件がどんな職種で、どのくらいの韓国語を求めているかだ。
日本の求人が求める韓国語レベル
日本の求人1,744件を、募集要項に書かれた語学要件で分類した。
| 求められる韓国語 | 日本の求人 | 割合 |
|---|---|---|
| 上級 | 1,358件 | 77.9% |
| 中級 | 386件 | 22.1% |
| 記載なし | 0件 | 0% |
上級が約8割を占める。ここだけ見ると厳しく見えるが、他の主要市場と並べると印象が変わる。
| 国 | 上級の割合 | 中級で応募できる求人 |
|---|---|---|
| 中国 | 91.1% | 154件 |
| ベトナム | 90.8% | 79件 |
| 日本 | 77.9% | 386件 |
| ロシア | 74.5% | 40件 |
| インドネシア | 65.6% | 133件 |
中国とベトナムは9割超が上級要件で、中級で応募できる求人はそれぞれ154件と79件しかない。
日本の386件は、その2つを足したよりも多い。 割合で見ればインドネシアのほうが緩いが、絶対数では日本が圧倒的だ。中級レベルの求人を探すなら、世界で最も選択肢が多い市場が日本ということになる。
「上級」「中級」は募集要項ではどう書かれるか
求人票は語学力を統一された言葉で書かない。「ビジネスレベル」「日常会話レベル」「韓国語が活かせる」など表現はさまざまだ。この記事の分類は次の目安で行っている。
| 分類 | 求人票での典型的な表現 | 実務で求められること |
|---|---|---|
| ネイティブ級 | 母語話者、ネイティブ | 契約書、法務文書、専門翻訳 |
| 上級 | ビジネスレベル、流暢 | 会議進行、報告書作成、顧客対応 |
| 中級 | 日常会話レベル、韓国語が活かせる、尚可 | 業務指示の理解、社内のやり取り |
| 初級 | 基礎レベル | 挨拶と定型表現 |
見分け方として実用的なのは、募集要項での扱いが「必須」か「歓迎」かだ。「韓国語必須」なら上級を想定していることが多く、「韓国語できれば尚可」「韓国語が活かせる」なら中級で通ることが多い。
なお初級レベルで応募できる求人は全5,691件中わずか6件だった。「働きながら覚える」という前提は、この市場では成り立たない。
中級で応募できる386件はどんな仕事か
ここが日本市場の特徴が最もよく出る部分だ。実際の求人タイトルを見てみる。
- 韓国語を活かせる! 韓国コスメブランドの営業/企画担当
- [HYBE JAPAN] Music Partnership Manager(タイアップ & クリエイティブ)
- [HYBE JAPAN] キャスティング(新人発掘・育成担当)
- 新橋 国際物流営業(韓国大手CJグループ)韓国語が活かせる
- 「韓国大手食品メーカーの日本拠点立ち上げ」管理部門担当
- 【VISA支援あり!】韓国語動画コンテンツチェック
- ITソリューション営業担当/韓国語できれば尚可
- コンサート制作(音楽芸能事務所/韓国語歓迎)
- HR Business Partner (Factory) — Food Manufacturer
- [JCONIC] ブランドデザイナー
共通点がある。業務の主言語は日本語で、韓国語は本社や取引先とのやり取りに使われているということだ。エンターテインメント、化粧品、食品、物流といった、韓国企業の日本拠点が伸びている分野に集中している。
最後の求人の表現が象徴的だ。「韓国語できれば尚可」——必須要件ではなく歓迎条件である。こうしたポジションでは韓国語より職種そのものの経験が先に見られる。
上級を求める1,358件との違い
上級求人のタイトルを集計すると、頻出語がはっきり分かれる。
上級側で最も多いのは翻訳と通訳だ。全体でtranslatorが204件、interpreterが197件のタイトルに現れる。次いで営業、管理職、専門職、顧客対応と続く。つまり韓国語そのものが業務の中身になっている職種が中心だ。
一方、中級側の頻出語はmanager、specialist、sales、business、staff、そしてマーケティングとSNS関連。翻訳と通訳は上位から消える。
ここから実務的な結論が出る。
- 通訳・翻訳を目指すなら上級が前提。中級で狙える枠はほとんどない
- 営業、人事、経理、マーケティングなどの職種なら中級でも入口がある。その代わり職種の専門性が問われる
言い換えれば、中級レベルでは韓国語の級を上げるより職務経験を積むほうが近道になりうる。経理ができる中級者は、経理ができない上級者よりこの386件で有利だ。
在宅・リモート求人は全体の8.2パーセントしかない
韓国語を使う在宅ワークを探す人は多いが、実際の数字は厳しい。
全5,691件のうち、リモートは346件、ハイブリッドは119件。合わせて8.2パーセントだ。韓国語求人の市場は、まだ出社が前提になっている。
さらに、語学要件で分けると意外な傾向が出る。
| 求められる韓国語 | 求人総数 | リモート・ハイブリッド | 割合 |
|---|---|---|---|
| 上級 | 4,658件 | 389件 | 8.4% |
| 中級 | 894件 | 39件 | 4.4% |
上級求人のほうがリモート率が高い。 直感に反するが理由がある。
リモートワークには対面で確認する工程がない。指示を一度で正確に理解し、文書で自ら説明し、誤解が生じれば文章で解く必要がある。すべてが語学の負荷を高めるため、企業はリモート職ほど言語リスクを避けようとする。
実際、リモート求人にはフリーランス通訳、コンテンツレビュー、ローカライズ、翻訳といった言語そのものが成果物になる仕事が多い。「韓国語の在宅ワーク」を探すなら、実質的には翻訳・通訳系の上級職を探すことになる。
雇用形態はほぼ正社員
上級求人4,658件のうち4,644件が正社員だ。中級求人894件のうちでも882件が正社員である。契約社員、アルバイト、フリーランス、インターンをすべて合わせても、どちらも20件前後にとどまる。
これが意味することは二つある。
一つは、アルバイトで試してから正社員に、という経路がほとんどないこと。韓国語のバイトを探している場合、この市場の求人はほぼ当てはまらない。
もう一つは、企業が韓国語人材を長期の戦力として見ているということだ。採用コストをかけた以上、長く在籍してほしいと考えている。入口は狭いが、入れば安定しているという構造になる。
職種で見た日本の韓国語求人
日本の求人に多い分野を、実際の求人内容から整理するとこうなる。
| 分野 | 特徴 | 想定される語学レベル |
|---|---|---|
| エンタメ・音楽 | 日本拠点のキャスティング、制作、権利業務 | 中級から |
| 化粧品・コスメ | 韓国ブランドの日本展開、営業・企画 | 中級から |
| 食品・飲食 | 日本法人立ち上げ、管理部門 | 中級から |
| 物流・貿易 | 韓国本社との調整、国際物流営業 | 中級から |
| IT・ゲーム | ローカライズ、QA、コンテンツチェック | 中級〜上級 |
| 通訳・翻訳 | 会議通訳、字幕、文書翻訳 | 上級以上 |
| 製造 | 韓国系工場の管理、生産管理 | 上級が多い |
エンタメ、化粧品、食品が中級の受け皿になっているのは、いずれも日本市場向けの業務が本体で、韓国語は社内連携に使うという構造だからだ。
この数字の出どころと限界
数字を判断材料にするなら、どう数えたかを知っておく必要がある。
集計対象はHangulJobsのデータベースで公開状態かつ募集中の求人すべて。抽出サンプルではなく全件である。各求人には登録時に求める韓国語レベルが記録されており、この記事のすべての表はその項目を直接集計したものだ。
限界も明記しておく。
- これはHangulJobsに掲載された求人の分布であり、日本の韓国語求人市場全体ではない。大手求人サイトに載る案件のすべてを網羅しているわけではない
- 語学要件は企業が求人票に書いた内容に基づく。面接での実際の要求水準は上下しうる
- 給与が記載された求人は5,691件中203件しかないため、この記事では給与を扱わない。標本が足りない数字を出すより扱わないほうが正確だ
よくある質問
韓国語のアルバイトを探していますが、求人はありますか。
この集計では、上級・中級を合わせた5,552件のうちアルバイトや契約社員は40件程度しかない。韓国語を要件とする求人は正社員採用がほぼすべてだ。短期の仕事を探す場合、この種の求人サイトより単発の通訳案件を扱う場所を当たるほうが早い。
未経験でも応募できますか。
中級枠の386件には新卒・第二新卒向けの求人が含まれる。ただし前述のとおり中級枠は職種の専門性が評価される領域なので、完全な未経験より、他業種でも営業や事務の経験がある方が通りやすい。
資格がないと不利ですか。
全5,691件のうち120件は語学要件をまったく明記していない。こうした求人は面接での実際の会話で判断することが多い。ただし日本の求人1,744件にはこの「記載なし」が0件で、日本市場は語学要件を明示する傾向が強い。
日本以外も見たほうがいいですか。
上級レベルなら中国が1,831件と最大の市場になる。中級レベルであれば、選択肢の数では日本が最も多い。韓国語のレベルによって答えが変わる。
今すぐ確認できること
記事を読むより、実際に開いている求人を見るほうが早い。
- 日本の韓国語求人を見る。1,744件、うち386件が中級で応募できる
- 中級レベルなら中級要件の求人で実際の募集内容を読む
- 在宅を探すならリモート求人を別に見る。全体の8.2パーセントと少ない
- 上級レベルなら中国やベトナムも選択肢に入る
なお、TOPIKの級と就職の関係についてはTOPIK何級あれば就職できるかで詳しく整理している。
この記事の数字は集計時点のもので、求人は毎日更新される。割合の傾向は維持されるが、個々の数字は変わりうる。
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